道は君のなかにある!

The Way is in You!

 君たちと対話していて、たのもしいな、と感じるときもあれば、ちょっと残念だな、と感じるときもある。自分の目標にむかってひたすら取り組む君はとてもたのもしい。でも、テストの結果などを見て元気をなくしている君はちょっと残念だ。テストの結果は、終わってしまえば、君の人生の過程の一時点にすぎない。君の人生は未来に広がっていくから、その結果をつぎのステップにつなげていくことのほうが重要だ。
 さて、受験生は、いよいよ時間との戦いになる。受験生でなくても、なにか目標を持っているなら、やはり時間との戦いになる。受験学習にかぎらず、なにに取り組むにしても時間がかかるのだ。
 時間とは、そのまま生命であり、生活である。そして、生命も、生活も、君の心のなかにある。哲学的な考え方だけれども、この考え方をテーマにして書かれた物語が、ミヒャエル・エンデの『モモ』だ。
 ミヒャエル・エンデ(1929-1995)は、ドイツの児童文学作家で、『はてしない物語』(ネバ―・エンディング・ストーリー)など、有名な作品が多い。西洋の読者はあまり感じないかもしれないが、わたしは『モモ』にも『はてしない物語』にも道教や仏教の影響を感じる。
 たとえば、モモと亀のカシオペアが「ありえない通り」を通って、「どこにもない家」に行かなければならない場面で、「急いでいるとき、あなたと離れることはできないの?」と、モモがいうと、亀の甲羅に「残念だけど、だめだ」という文字が浮かぶ。「どうしても、あなたは自分でのろのろと這っていかなければならないの?」とモモがたずねると、亀の甲羅に不可解な文字が浮かぶ。
 DER WEG IST IN MIR(The Way is in Me)わたしのなかに道がある。
 まさしく、老子や荘子がいうだろう答えだ。
 『モモ』を読めば、君たちにもこの答えの意味がピンと感じられるだろう。
 君が目標を達成するためには、君の時間と君の生命や生活が絶対に必要だ。そして、目標にむかう道は、絶対に君自身が歩いていくしかない。もし、君が「どうしても、あなたは自分でのろのろと歩いていかなければならないの?」とたずねられたら、どう答えるだろう? 目標に到達しなければならないのは、たしかに君自身だから、「わたしが決めた目標だから」とか「わたしがやるしかないから」とか「これがわたしの道だから」とか答えるにちがいない。
 じっさい、毎日の生活のなかで、だれでも自分の目標にむかっている。些細な目標であれ、遠大な目標であれ、ひとは目標を意識するから、行動を起こす。なにか目的をもって意欲的に取り組む以上、すべての行動に目標があるといっていい。
 受験生が志望校を意識すれば、学習したくなるだろうし、スポーツマンが試合を意識すれば、練習したくなるだろう。つまり、目標を意識すると、意欲が生まれるのだ。この意欲のことをモチベーションという。どうしても達成したい目標を持つことが、君のやる気を引き出し、行動をうながし、取り組みを持続させることになる。
 いよいよ成長の夏を迎える。今年の夏期講習のテーマは、「君の可能性はもっと大きい! “できる自分”を実現しよう‼」だ。
 時間も、生命も、生活も、道も、答えも、君の心のなかにある。
 自分の目標にむかって、積極的に取り組もう!

山手学院 学院長 筒井 保明